MADE IN PARADISE

ガジュマル


「そろそろ散髪しまいじゃないねぇ」
お隣の武さんが見上げる先に、それはあった。

パラダイスストアの敷地には独特な存在感を放つ大きなガジュマルの木がある。海から吹く風のせいだろうか、それはいつしか山の方へ向かってぐんぐんと枝を伸ばし、隣の建物を覆うボサボサの髪の毛のようになっていた。







見上げると、薄緑や深緑に重なり合った葉が太陽に照らされる。きらきらと滲むように輝く様はなんとも神々しい。地面には大きく日影が浮かび、心地よく吹く風が潮の香りを運ぶ。ガジュマルの木には色々な鳥が集まり、自然の移り変わりを素晴らしいうた声で教えてくれた。たくさんの人々に触れられて、いつも僕たちを静かに見守ってきたのだ。夏の間は掃くそばから葉を落とすのが玉に瑕だけれど、そのことを思えば、落ちる葉さえも天からの恵のように感じられる。







しかし、この守り神とも言える大木も、大きな台風が来たら張り出した枝が折れ、大きく成長して幹のようになった木根が倒れてしまうかもしれない。今まではこのご神木に手を入れることは避けてきたが、お隣の武さんのような声もあり「散髪」をすることに決めた。

切られることになったガジュマルの枝たち。
その木を見上げながら「捨てることは出来ないよね。」と心の中で呟いた。



そんな時、木工作品を作っているwoodworks CUEの今田さんと出会った。材木屋の次男としてこの島で生まれ育った今田さんは、幼い頃から木に親しんできた。木材を買い求める大工さんと仲良くなっては木のことを学び、いつしかそれに夢中になっていったという。

彼の作品は島で採れる木を使い、それぞれの木が持つ特性や表情をできるだけ生かしたいとの思いから、決まった型を持たない。ものには作り手の人柄が映されるというけれど、彼の作るものは実におおらかで自由な雰囲気がある。ガジュマルの次の舞台は、彼にお願いすることにした。





剪定を終えトラックいっぱいに詰め込まれたガジュマルは、まだ生き生きとしている。どんな風に生まれ変わるのか像を膨らませながらその後ろ姿を見送ったが、戻ってくるまではまるで手紙の返事を待っているような気持ちだった。

ほどなくして、見覚えのあるトラックに積まれ戻ってきたガジュマル。新たな命を吹き込まれたその木は、丸い形、平らな形、脚の付いたもの、手にすっぽりと馴染むもの、形は違えど、どれも本当にいい顔をしていた。
ひと皮むけた年老いたガジュマルの肌はとてもきれいで、触れるとやわらかく、優しく何かを語りかけているようだった。

長い時間、同じ場所で育ったガジュマルは、形を変えて別々の場所に旅立っていく。
ガジュマルの器を見ていると、奄美の美しい景色や気持ちのいい風、笑顔が広がる愉快な時間を思い出させてくれて、僕たちを、そして、離れ離れになったガジュマルを時空を超えて再び繋げてくれる。
ガジュマルの名前の由来は、幹や木根が絡まった姿の「絡まる」が訛ったものという説があるが、ここにある大きな木もその由来の通り、いつまでも人と場所、時間を絡めながら、大切なことを伝え続けてくれるだろう。




photo, text _ Miyuki Arimura










woodworks CUE 今田智幸
鹿児島県奄美市名瀬和光町25-7
090-7455-4395
woodworks.cue@gmail.com
Instagram : @woodworks.cue

WOOD VASE / woodworks CUE

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販売価格 4,950円(税450円)〜

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